世界で最もイノベーティブな会社を複数経営し、トランプ政権の中核に入って、政府の仕事までこなすイーロン・マスクは、恐らく世界一マルチタスクをこなす人物の一人だろう。
いまや仕事というカテゴリーの中にも、お金のためにやるライス・ワーク、プライベートと仕事が混じったライフ・ワーク、ビジネスや数字が侵入できない異なった時間軸の中で、魂の叫びに耳を傾けながら行うソウル・ワークなど、様々な仕事のスタイルがあります。
米国のベストセラー作家、ダニエル・ピンクは、全く異なる領域の仕事を本業と同等の自信を持ってこなせる人を「境界を超えられる人」と呼んでおり、現代はこういった人たちの方が、仕事をより効率的に進められるのだと言う。(1)

境界を超えられる人が求められる。
どれだけ物事を突き詰めても、完璧なエンジニアになることはできないし、完璧なライター、完璧な料理人、完璧な父親などは存在しない。
アップルのエンジニアとして働きながら、ラッパーとしても活躍しているブランドン・トーリーは次のように述べている。(2)
「人生の秘密は、夢を自由に泳がせて形を変えることを許すことだと思うんだ。夢に十分な時間と空間を与えたら、自由に流れ出し、重なるところを見せてくれる。」
「異なる夢が交じり合い、響き合う。そしてひとつの『マルチドリーム』になり、妥協することなく追求できる。」
いまや同じ会社で机を並べて仕事をしている同僚であっても、ライス・ワーク、ライフ・ワーク、そして、ソウル・ワークと様々な視点から自分で人生をデザインしていかなければなりません。

夢を泳がせて、形を変えることを許す。
ある意味、仕事において「本業」や「長期」という考え方自体があまり意味を持たなくなってきているのでしょう。
「ライフ・シフト」の著者として有名なリンダ・グラットン氏は、22歳までのフルタイムの教育、65歳で引退するまでのフルタイムの仕事、退職した後のフルタイムの引退という人生の3つのステージの考え方が既に時代遅れになると述べています。(3)
つまり、学生の時から本格的に働く人もいれば、社会人になってから創造性のインプットのために1年の休暇を取る人もいれば、会社を退職して70歳で起業をする人も普通に出てくることでしょう。
ニューヨークの伝説的なデザイナーとして知られるステファン・サグマイスターは7年に1度、クリエティブの充電をするために、1年の長期休暇を取ることで有名です。
どれだけ長く休みを取ろうと、彼が顧客を失うことがないのは、彼が長期休暇を通して、よりクリエティブになって戻ってくることを知っているから。

社会人で学生に戻る人もいれば、70歳で起業する人も出てくる。
ある意味、これだけ価値観が多様化した世の中においては、一つの仕事を天職と感じたり、一つの仕事の中だけで生きがいを追求していくのは難しいのかもしれません。
一つのことで完璧を目指すのではなく、夢を自由に泳がせて、形を変えることを許した上で、境界を上手に超える準備を少しずつ始めていく必要があるのです。
 
        
           
 
                    